『アシェンデン』 [人文科学(主に小説)]
イギリスの現代作家の小説を読んだ。
普通に面白く読んだのだが、最後の訳者の解説を読むと、けっこう有名な小説らしい。
イギリス文学史の教科書だと、モームなんかは小さくしか扱われてないから、知らなかったよ。
モーム自身が第一次世界大戦の頃、スパイをやっていたという事実にまずビックリ。
意外とスパイって、簡単になれるもんなんですね。
この作品自体、モームの体験談を膨らませて小説化したものらしく、ものすごくリアル。
これを読んだら、もうジェームズ・ボンドなんて馬鹿らしくて観れないな。
イギリスのスパイはやっぱこうでなくっちゃ、と思いました。
「アシェンデン」というのは主人公の名前で、モームの分身。
アシェンデンはいろいろ危ない橋も渡りますが、実際にはあまり実績をあげていません(少なくともこの作品中では)。
スイスで売国奴を捕まえたのが唯一の手柄くらいかな。
モームはあまり再評価されていないようですが、もっと高く評価されてしかるべき英国作家だと思います。
皮肉と理性がたっぷりで、非常に英国的です。
『ガサラキIV 未来(あした)』 [人文科学(主に小説)]
物語自体は、『III 接触(ふれあい)』で完結していたのね。
第一章「時に果つる」
野望に燃える一清はユウシロウを諦めて、美鈴でガサラキを呼ぶ実験をすることに決める。
第二章「8年前―」
この第二章がこの巻のメインで、全300ページ中、200ページ以上が割かれている。
そして、時代はぐぐっと8年前にさかのぼって、この謎の多かった物語の秘密がこれでもかこれでもかと暴露される。
TVアニメはところどころしか見ていいなくて??だったので、ガサラキ、クガイ、カイ、TA、インヴィテイター、フェイク、シンボル、F、豪和家、ユウシロウと憂四郎との関係など、謎が全てつまびらかになってくれるのが嬉しい。
『エヴァンゲリオン』は観終わったあとも、謎だらけで、悩まされたよ。
貞本版のコミックスで、『エヴァンゲリオン』の謎も全て補完されるのかな。
第三章「神の声」でこの物語はおしまい。
結局、『ガサラキ』は『ボトムズ』のセルフ・パロディのようなものだったのだなと実感。
パロディという言い方が悪ければ、同工異曲とでも言うべきか。
結局、ユウシロウはキリコ同様「神」になることを拒否して、ラブラブエンド?
「プロローグ」
…最後に「エピローグ」ではなくて、「プロローグ」がついてます。
よくあるSFのつなぎ合わせのような適当なおまけ。
全てはここから始まったってことね。
ちょっと尻切れトンボな印象ですが、面白かったです。
2巻、3巻が盛り上がり過ぎました。
『ガサラキIII 接触(ふれあい)』 [人文科学(主に小説)]
第1章「静脈瘤」
静脈瘤というのは地名です。
2巻の終わりの激しい戦闘終結のどさくさにまぎれて、ユウシロウとミハルは駆け落ちしました。
大阪の不法滞在の中華街の名前(通り名)が静脈瘤で、ふたりはそこで同棲生活を始めます。
第2章「胎動」
生まれたときから実験材料として扱われきて、石の心のミハルも、ここでの生活で、どんどん人間らしくなっていきます。
ユウシロウは日銭を稼ぐため、オーウェルみたいに朝から深夜まで皿洗いの仕事をします。
そんなキツイ仕事に耐えるユウシロウの心の支えはもちろんミハルです。
ユウシロウとのラヴラヴ隠棲生活に、ユウシロウの妹が突然超能力と偶然に導かれて乱入してきます。
近親相姦気味にユウシロウが大好きな妹の美鈴にとっては普通に大ショックです。
第3章「動乱」
ミハルを管理していたシンボルの手が静脈瘤にも伸びてきました。
ユウシロウを管理していた豪和家の手下も静脈瘤を探り当てました。
これ以上、ふたりの同棲は無理です。
ミハルはかねてから淡い想いを寄せていた、シンボルの評議員メスのところへ帰っていきます。
ユウシロウも実家に帰ります。
この小説の実質的な主人公はIQ160以上の天才、豪和一清です。
物語は一清の、コンプレックスや野望、その思惑や行動によって、動いているのです。
ユウシロウやミハルは、美しい無垢な心の持ち主で、読者的に言って好感度高いですが、自分から行動を起こそうとはしないで運命だか他人に流されっぱなしの操り人形に過ぎず、あまり興味深い人間ではありません。
第4章「決戦」
この近未来の世界では地球温暖化現象などの環境破壊のせいで、アメリカの穀倉地帯が大打撃を受けています。
日本は経済的に強く、アメリカとの経済摩擦が危ないところまできています。
アメリカ政府は日本を潰すため、日本への穀物の禁輸政策の実施を決定します。
そこで、日本の民族主義者のボス西田さんが登場です。
西田さんは一清以上の天才で、豪和インダストリー(つまり一清)の協力を得て、アメリカの日本への経済制裁への報復として、無血クーデターを起こし、日本経済を独裁的に掌握することに成功、米国に対して日本中の全資産を使ってNY市場を混乱させ、アメリカ経済を完全に壊滅させる計画を発動します。
西田さんの天才的頭脳と、豪和の超スーパーコンピュータの力をもってすれば、あらゆる対抗策を講じてもアメリカ経済の壊滅、つまりはアメリカの壊滅は不可避と米国大統領も判断します。
そこで、大統領はシンボルの協力を得て、都市制圧平気の決定版、身の丈4メートルの人型戦闘ロボ、フェイク4機を「第三国のテロリスト」として、超スパコンを物理的に破壊するため、豪和インダストリーの本部に送り込みます。
西田さんのカリスマ性は、自衛隊はもちろん特自にも影響を及ぼしていて、豪和の開発したフェイクとほぼ同性能を誇るタクティカル・アーマー4機を運用して、命懸けでフェイクの襲撃を迎え撃つことに賛同します。
ユウシロウもTAに乗って参戦しますが、『ガンダム』のアムロのような英雄的活躍はしません。
指揮車のバックアップを受けられない分、米軍のテロ部隊の方が不利ですが、彼らには、特自にはまだ配備されていない強力な電磁式レールガンを装備しているという利点があるので、勝負は五分と五分といった感じです。
結局、特自の実験中隊のチームワークのおかげで、犠牲者も出しましたが、勝利をおさめます。
米国大統領は、作戦失敗の報告を受け、穀物モラトリアムを取り消す判断を下し、日本の右翼のボスと直談判します。
西田さんも鉾を収める(米国に対する経済攻撃を中止する)決断をして、切腹して果てます。
(つづく)
オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』 [人文科学(主に小説)]
大好きなジョージ・オーウェルを読んだ。
小説ではなくて、ルポルタージュ。
オーウェルの貧乏生活体験談。
『パリ・ロンドン』というタイトルからもわかるように、2部構成。
最初はパリでの貧乏生活。
作者はノンエリートの警察官で、大英帝国の植民地で警察官として働いていたのだが、文筆家を目指して、退職、わずかな貯金を切り崩しつつ執筆活動をするためにパリにやってきた。
ロンドンは物価が高いので、パリにきたらしい。
しかし、貯金はすぐに使い果たし、パリで最底辺の暮らしをする。
皿洗いという最底辺の重労働も体験する。
イギリスの友人から、精神障害者の子どもの面倒を見る仕事があるから帰って来いと誘われ、イギリスに帰る。
しかし、いろいろ事情があって、その仕事になかなかありつけない。
というわけで、イギリスで動産も不動産もなくホームレスになる。
イギリスではホームレスを保護する法律があるらしく、ホームレスを宿泊させる施設がある。
イギリスは日本と違って寒いから、路上で寝てると死んでしまうらしい。
当時は段ボールとか賞味期限切れのコンビニ弁当のような便利なものも簡単に手に入らなかったろうし。
しかし、税金を納めないホームレスが長居すると各行政区の負担が大きくなってしまうので、その施設には1泊しかできない決まりになっている。
その行政区に1泊お世話になったら、1ヶ月はその行政区に戻ってきてはいけないことになっている。
さもなくば、放浪罪かなんかで警察に捕まって、刑務所行きだ。
だからイギリスのホームレスは常に放浪する。
施設を追い出されたら、どこか別の行政区の施設まで移動して、そこでまた1泊し、次の日はまた他所へ移動して別の行政区のお世話になるのだ。
路上で寝たりしたら、やはり警察に逮捕されて酷い目に合わせられるから、とにかく歩いて移動し続けなくてはならない。
オーウェルもイギリス各地を放浪して苦労した。
苦労の末、とうとう障害者の面倒をみる仕事(住み込み?)にありつけて、放浪生活から解放される。
イギリスの行政、福祉政策に対するオーウェルの批判・告発になっている。
この本を読むと、ホームレスへの偏見がなくなるだろう。
オーウェルは貧民やホームレスと交流するが、彼らの労働者や定住者と何ら変わりない普遍的な人間性をユーモアを交えて見事な筆致で描いている。
『ガリヴァー旅行記』 [人文科学(主に小説)]
平井先生の翻訳。
先生は謙遜していらっしゃるが、立派な翻訳だと思う。
あらすじ紹介:
ガリヴァーは航海に出る。
いろいろあって、小人の国にたどり着く。
いろいろあって、イギリスに無事帰る。
ガリヴァーはまた航海に出る。
いろいろあって、巨人の国にたどり着く。
いろいろあって、イギリスに無事帰る。
ガリヴァーはまたまた航海に出る。
いろいろあって天空の城ラピュタの国にたどり着く。
いろいろあって、イギリスに無事帰る。
ガリヴァーはさらに航海に出る。
いろいろあって家畜人ヤフーの国にたどり着く。
いやいやイギリスに帰されるが発狂する。
小学生の頃、絵本で読んだ覚えがある。
たぶん、その絵本版は小人国と巨人国のエピソードだけだったと思う。
ラピュタと家畜人は子どもにエグい話になっていくのだ。
確かに巨人国から無事生還したところで、船乗り稼業を引退していれば、ハッピー・エンド。
ガリヴァーは少なからぬ教養と知能の持ち主だ。
環境適応能力に抜きん出ていて、驚異の生還率を誇る。
しかし悲しいかなエゴの弱さが結局彼を破滅させる。
小人国では、暴君にならず、弱者と共生してみせる。
巨人国では、卑屈に身を引き、強者に可愛がられる。
天空の城の学問や芸術に没頭する連中は賢くも無視して、地上の死者と戯れる。
馬が主人の国では、完全に飼い慣らされ、人格が崩壊する。
バッド・エンド。
いつか挑戦したいもの [人文科学(主に小説)]
誰にでも夢はあるだろう。
私の夢はいつか『ユリシーズ』を読むこと。
長くて難しそう。
Ulysses (Penguin Modern Classics)
- 作者: James Joyce
- 出版社/メーカー: Penguin Books Ltd
- 発売日: 2000/03/30
- メディア: ペーパーバック
『フィネガンズ・ウェイク』は、はなから諦めている。
『カーラの狼』(下) [人文科学(主に小説)]
早く第六部の翻訳が出ないかなあ。
黒の水晶球の魔力を使って、「どこでもドア」が使えるようになりました。
この便利なアイテムのおかげで、ニューヨークの薔薇はなんとかなりそうな按配。
「狼」襲撃の件ですが、中巻の「有益な話」によって、相手の正体も致命的な弱点も判明しています。
村人の間に潜伏していたスパイの摘発にも成功しました。
多勢に無勢でしたが、奇襲が功をなして、カーラは大勝利!
たいへんなのはスザンナ。
とうとうマイアに完全に人格を乗っ取られてしまったようです。
黒の水晶球を持ち出して、失踪してしまいました。
ローランドたちは黒の水晶球なしで、「どこでもドア」を開けることができるのか?
無事、スザンナを救出することができるのか?
どうなるかは、第六部のお楽しみです。
あと、衝撃のエピローグ!
とうとうスティーヴン・キングの著作『呪われた町』をローランドが入手します。
そのキングの小説の登場人物であるキャラハン神父は、自分の実在について悩み始めますが、ほかのみんなはスザンナの方が心配なので、とりあえずキャラハン神父のアイデンティティー・クライシスは放置です。
このあとキャラハン神父はいったいどうなってしまうのでしょうか?
「スティーヴン・キング」も登場人物として出てくるのでしょうか?
第六部、第七部が気になってしょうがないです。
スティーヴン・キング [人文科学(主に小説)]
うんじゃらもんじゃら
久しぶりに洋書に挑戦してみようかな。
今はアマゾンでペーパーバックが買えるから便利。
アマゾンの洋書が安いから、対抗して紀伊国屋なんかでも洋書の値段を下げつつあるような気がする(ただの気のせいかもしれんが)。
やっぱり翻訳でもう読んでるキングが読みやすいか。
候補リスト
怖いわんわんが出てくる奴。
毎月狼男が襲ってくるやつ
Cycle of the Werewolf (Signet)
- 作者: Stephen King
- 出版社/メーカー: New Amer Library Trade
- 発売日: 1985/04
- メディア: ペーパーバック
ふたつのペンネームで書いてた小説家が、実際にふたりに!
リチャード・バックマン名義で発表したやつ。
『カーラの狼』(中) [人文科学(主に小説)]
ダークタワーVの中巻を読み終わった。
上巻同様、身体が起きた状態では1ページたりとも読んでません。
就寝前の寝っころ読書。
楽しかった。
もう昨晩から下巻を読み始めているよ。
N.Y.の薔薇とカーラの狼とスザンナの子どもと、事件が3つ同時進行でローランドは困惑しているが、タイトルが『カーラの狼』なので、カーラの狼事件が優先されることは読者にはまるわかり?
さらに第六部のタイトルが『スザンナの歌』なので、日本の読者はスザンナの件は第六部に持ち越しだろうと見当がついてしまうわけで…良い意味で裏切って楽しませてくれるといいけど。
この中巻にはさらに副題がついていて「有益な話」という。
子どもをさらう狼についての情報集め、キャラハン神父の昔話など、本当に「話」ばかりで物語りは全然先に進まなかった。
「狼」対策の準備は着々と進んでいるが。
カーラの年寄りの昔話から、「狼」の正体の見当がつく…のだが、文庫本の表紙の画を見れば、いきなり解答が出てる…日本の読者の立場がちょっとない。
そうです、「狼」はメカ馬に乗ったビームサーベルを持ったサイボーグかアンドロイドです。
私が発行者だったら、このカヴァー装画は却下すると思うな。
まあ新潮社の勝手だけど。
ちなみに病院の待合室で暇つぶしに週刊誌読んだけど、最近週刊文春はスピリチュアルカウンセラーのエハラーを叩いているのだが、週刊新潮はなぜかエハラーを持ち上げているのだ。
角栄潰しでは共闘した文藝春秋社と週刊新潮だが、普段は仲が悪いのね。
閑話休題。
中巻のメインはキャラハンの半生記(語り)。
『呪われた町』(集英社文庫)の後日談から始まる。
あの小説家と少年の末期が語られるまでは期待していなかったので狂喜。
神父は吸血鬼に堕落させられて、アル中になる。
壮絶なアル中体験談。
著者の経験が生かされているに違いなかろうと思われる。
どちらかというとエディのヘロイン中毒の方が深刻な気がするが、キャラハン神父のアル中話の方が断然迫力とリアリティがあって面白い。
キャラハン神父はエディと同時代にいた人物だが、下等な吸血鬼と『アトランティスの心』で有名な黄色いコートの下衆野郎に追跡されて、いろいろあって、結局、黒衣の男に導かれて、このガンスリンガーたちの世界へ連れてこられたのだ。
ローランドは今度は関節炎で悩んでいる。
身体中が痛くてしょうがないらしい。
これも著者の交通事故の経験が生かされているのではなかろうか。
ガンスリンガーたちには拳銃が3丁しかないので、スザンナは皿を投げて戦うことになり、その稽古をする。
ローランドはスザンナの子ども(妖魔)を堕胎させようとするが、カトリックのキャラハンに激しく怒られて説教される。
著者のフェミニズムに関する思想があらわれているようで興味深い。
(つづく)
5月の文庫本の購入予定(改訂版) [人文科学(主に小説)]
文庫本はけっこう買います。
値段が手頃だから。
『スザンナの歌』はリリースされないらしい。
哀しい。
『カーラの狼』をゆっくり読み進めよう。
(まだ発売されてないだけに、アマゾンでも予約を受け付けてないのもあります)
①イェスペルセン『文法原理(上)』
②鎌田慧『椎の若葉に光あれ』
③澁澤龍彦『太陽王と月の王』
④澁澤龍彦『妖人奇人館 新装版』
- 作者: 澁澤 龍彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/05/03
- メディア: 文庫
⑤谷甲州『エミリの記憶』
- 作者: 谷 甲州
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05/08
- メディア: 文庫
⑥中村うさぎ『愛と資本主義』
⑦フーコー『フーコー・コレクション1』
⑧フロイト『あるヒステリー分析 ドニテの症例』
⑨BONES『エウレカセブン3』
- 作者: 三島 由紀夫, 虫明 亜呂無
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/11
- メディア: 文庫
ダーク・タワーV 『カーラの狼(上)』 [人文科学(主に小説)]
ようやく『カーラの狼』の上巻を読み終わった。
ひとつ自慢できること。
この文庫本は完全に水平な状態で読みきりました!
就寝前に、仰向けに寝っころがって読んでたってことです。
薄く分冊(400頁)してくれているおかげで、寝っころ読書でも本を持ち上げてる手が疲れなくて楽チンです。
これは上巻ですから、当然まだ続きがあります。
上巻で完結するわけがありません。
誰にだってわかることです。
上巻が存在する以上、誰だってその下巻が存在することを確実に認識します。
しかし、中巻が存在するかどうかは神と出版社のみぞ知るところです。
『カーラの狼』は3分冊されているので、中巻も存在します。
ね!
私はどちらかというと分冊されるのが好きじゃないです。
長期連載された漫画のように膨大なページ数になるような作品の場合は分冊せざるを得ませんが、できることならば(物理的に許される限り)全一冊にまとめてもらいたいものです。
分冊されると、部分的に入手困難になってしまったり、散逸してしまって、再読するときに探し回らなきゃならなくなってしまったりして不便極まりないのです。
特に机上で読むのが前提条件のハードカヴァー本は、広辞苑みたいに重くても全然かまいませんから、分冊は許したくありません。
文庫本が分冊されるのはまあ、しょうがないと思ってますし、実際、分冊によるダウンサイジングのために発生する利便性にもあなどりがたいものがあることも認めます。
文庫本が薄くて軽いと、持ち運び(外出時に携帯)が便利ですし、仰向けに寝て読むときも腕の筋肉に喜ばれます。
それはそれとして、
3冊分冊はちょっと難しい。
別にいいんだけど、(上)(中)(下)というわけ方はやめて欲しい。
以前、たしか岩波文庫のハーディの『日陰者ヂュード』だったと記憶してるのだが、大学の生協の本屋で、これの(上)と(下)を買ったのだ。
で、伊豆高原での旅行先で、上巻を読み、感動に打ち震えつつ、下巻に進んだのさ。
でも下巻を読み始めて??だったのさ。
なんかつながりがおかしい。
なんでかな?と思って、下巻についてる訳者あとがきを読んでみたら、下巻の部分を訳すのに時間がかかってしまってごめんなさいと謝っている、下巻が出版されるのに10年近くブランクがあったため文体も少し変わってしまったとか言い訳していたと思う。
ああ、それで下巻に進んだら違和感を感じたのかと納得しかけて…
ようやく中巻を読み飛ばしていたことに気がついた。
伊豆高原の文房具屋をかねた本屋に中巻を求めて行ったが売ってない。
注文すると届くのに1ヶ月くらいかかると。
しかたないから、超感動小説の読書は中断せざるを得ず、東京に戻ってから大きな書店で中巻を買って、続きを読みましたとさ。
そんな経験があるので、(上)(中)(下)という3冊分冊は嫌いになった。
(上)(下)の2冊分冊との区別が紛らわしいじゃないか。
3冊分冊するなら(天)(地)(人)にしてくれろ、と願う。
まあ、用心してよく調べればいいだけのことなんだけど。
世の中、情報化社会になったことだし。
そういやトールキンの指輪物語の第一部『旅の仲間』の文庫も酷い分冊の仕方してるね。
4冊分冊で(上1)(上2)(下1)(下2)だってさ。
そして第二部『二つの塔』になると、3冊分冊で、(上1)(上2)(下)。
意味わかんね…
でも、これは意外とアイデアものかも。
『ヂュード』のときみたいに頭(上)とケツ(下)だけを買って、真ん中(中)を買い忘れる心配はない。
(上1)と(下)の2冊を手にしたら、なんか変だと気づくはずだ。
ちなみに第三部『王の帰還』になると、2冊分冊で(上)と(下)だ。
この文庫の(下)を先に入手したら、『王の帰還』には(上1)と(上2)があるんじゃないと勘違いしてしまわないか、心配だ。
ふぅ。
まとめると、
2冊分冊なら普通に(上)(下)でよい。
3冊分冊なら、(天)(地)(人)に統一して欲しい。
4冊分冊にするなら、(酒)(池)(肉)(林)に統一して欲しい。
これなら勘違いする心配は皆無だ。
コミックスみたいに数字で表すのが一番無難だが、それだと、どこまで続くのかわからなくて不安になるので出来ればやめて欲しい。
4巻ですでに完結しているのに、5巻を探し回って無駄な時間を費やした苦い経験がある(私がバカなだけ)。
とにかくレンガブロック(『ザ・スタンド』のペーパーバック)みたいになってしまってもいいから、全一巻にまとまっているのが一番好き。
閑話休題。
『カーラの狼』上巻について(記憶を頼りに…)。
カーラという農村には20年に一度くらいのペースで「狼」がかなりの集団で襲撃に来る。
「狼」とは狼のマスクをかぶった人間、または人間型のサイボーグかロボット。
同じ色の「馬」に乗ってやってくる。
カーラでは男と女の双生児が生まれる不思議な土地(単生児はごく稀)。
「狼」は(日本でいうところの)小学生くらいの年齢の双子のうちの片方を攫って行く。
そしてじきに白痴にして、列車に乗せて村に戻してくれる。
白痴になった双子の片割れはとりあえず肉体の成長も止まるが、15歳になるといきなり巨人化し(酷い苦痛を伴う)、そして短命に終わる(酷い苦痛を伴う)。
村人は「狼」に抵抗したいが、暴力的にかなわないのが明らかなのでいつも諦めている。
謎のメッセンジャーロボット、アンディの情報によると、そろそろまた「狼」が襲撃してくるという…
そして、そこへ旅のガンスリンガーの一行が偶然、ではなくてたぶん運命の導きによって通りかかる。
70年代のNYからやってきた吸血鬼退治が好きそうなキャラハン神父というクリスチャンがカーラの村に住み着いている。
彼がガンスリンガーたちに渡りをつけて、彼らを用心棒として雇い、「狼」の襲撃に対抗することになった。
ガンスリンガーたち(見習いも入れてメンバー4人)が連発式拳銃しか持ってないのに比べて、「狼」たちは機関銃や誘導兵器とかなりの重武装、しかも60人以上の軍隊らしい。
正面衝突してはガンスリンガーズに勝ち目は無いので、その準備をする。
「狼」の襲撃までにはまだ1ヶ月ほど余裕があったのだ。
村人の協力を得て、土地勘を養い、いろいろ罠も仕掛けねばならぬ。
準備してるだけで、上巻はおしまい。
「狼」の襲撃は次の巻に持ち越し。
準備中にもいろいろある。
スザンナは以前魔物にレイプされていて、どうやら魔物の子どもを妊娠してしまったらしいことにローランドは気づく(夫のエディはきづいてない)。
スザンナはお腹の中の魔性のものの影響で、また多重人格になってしまう(ある程度の自覚症状あり)。
それにキャラハン神父は怪しい黒の魔水晶球(世界中に13色あるうちのひとつ)を持っていて、その影響で、ガンスリンガーたちは時間と空間を越えて、70年代のNYに半実体化してしまう。
NYの角地(一等地)に空き地があって、ここに不思議な薔薇が咲いている。
この薔薇がどうも問題のダーク・タワーらしい。
スザンナ以外の3人はこの薔薇にうっとりするが、魔性のものを宿しているスザンナにはこの素敵で魅力的な薔薇に近づくことが出来ない…
どうも紅の王(ダークタワーを破壊して世界を崩壊させようとしているひと?)の配下の者らしき怪しい連中がこの空き地を狙っている。
ガンスリンガーたちは、カーラの「狼」の問題は別にして、この空き地と薔薇も守らなくてはならないのだ。
どちらかというと空き地の薔薇を守ることの方がミッションの優先順位は高そうである。
多重人格の障害が出てきたスザンナ(とお腹の中の魔物)もなんとかしてやらなくてはならない。
ローランドはまっこといそがしい。
キングファン待望のダークタワーシリーズの続き [人文科学(主に小説)]
うんじゃらもんじゃら。
ようやく『カーラの狼』を読み始めました。
- 作者: 風間 賢二, スティーヴン・キング
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
文庫本なので、就寝前に仰向けに寝っころがって、読んでます。
最近は酷い不眠症の治療のため、かなり強力な睡眠剤を飲んでいるので、床についてから、1時間もかからずに寝入れるようになりました。
30分で寝てしまうこともあります。
ということは、寝っころ読書がはかどらないということです。
以前、酷いときは、一晩中寝っころ読書してて、朝までに文庫本1冊読み終わってしまうこともあったものなのですが…
シリーズ第五部『カーラの狼』いいですね。
第四部までは角川文庫版で読んでいたので、この第五部の日本語訳は本当に待望でした。
第四部までのあらすじ。
主人公のローランドの世界は時間も空間も歪んで崩壊寸前。
この世界は異次元世界というより、荒廃した遠い未来の世界のようだ。
世界の中心にあって、世界を支えているらしいダークタワーというのがダメになりかけているので、世界が崩壊しかけているらしい。
ローランドは王子様のような特権階級の跡取り息子。
父親は名うてのガンスリンガー(拳銃使い)。
ミドルティーンのローランドも、立派なガンスリンガーになるために修行の毎日。
悪い魔法使いだか占い師が、父親の出張中、ローランドの愛する母親をたぶらかして堕落させた。
マザコンのローランドは怒って、その「黒衣の男」に復讐するため、若すぎるのにガンスリンガー認定試験を受け、見事に合格する。
若きローランドは幼馴染のガンスリンガー見習いを引きつれ旅に出る。
旅先で王国を滅ぼそうとするクーデター計画を知り、これを殲滅する。
旅先で知り合った娘さんと恋に落ちて、セックスしまくるが、彼女は殺されてしまい、恋愛は成就しない。
ローランドはマザコンということもあって、以後独身をつらぬくようだ。
大活躍の旅から帰ってくると、いろいろあって父親も死に、栄光の王国は没落する。
父と母の恨みを晴らすべく、ローランドはひとり「黒衣の男」の探索の旅に出る。
いろいろあって、「黒衣の男」に追いついた。
ジェイクという後に旅の仲間になる少年を見殺しにもした(パラドックスにより後に復活する)。
「黒衣の男」との対決はなぜか戦いではなく、長いおしゃべり。
一晩中しゃべり明かすが、時間はもっと長いこと経過していたようだ。
なにしろこの世界では時間の流れがおかしくなっているのだ。
朝になると「黒衣の男」は死んでいた。
ローランドも疲労困憊して渚で呆然としてる。
いつもははしこいローランドだが、このときはぼんやりしていたので、蟹だかザリガニだかの化け物の襲撃を防げず、拳銃使いとして大事な右手の指を欠損してしまう。
彼は2丁拳銃使いだったが、以後の冒険では左手でしか使えなくなる。
しかも、毒にやられて死にかける。
この時代にはほとんどの産業が廃れてしまっているので(拳銃の弾丸も貴重品だ)、抗生物質が入手できないので、このままではローランドが死に至るのは確実。
しかし運命の導きによって、1980年代のNYから召喚されたヘロイン中毒の男から抗生物質を入手するこができて九死に一生を得る。
このエディという名前のヘロイン中毒患者、ヘロインの売人でもある。
不幸な家庭に育って、精神に異常をきたした兄をもっていて(敬愛はしている)、とにかくいろいろ問題をかかえてるのだが、ローランドの旅の仲間となり、だんだん更生していく。
エディも幾多の試練を乗り越え、いずれ立派なガンスリンガーになっていく。
ローランドは貴族の生まれなので、ノウブレス・オブリージのためか、それともそれが運命だからなのか、今度はダークタワーを目指し、世界の修復をする旅に出る。
運命の導きによって、3人目の旅の仲間が1960年代のNYから召喚される。
黒人女性で両足がなく車椅子生活を余儀なくされている身体障害者だ。
しかも二重人格という精神障害もかかえている。
とにかく彼女も旅の仲間に加わる。
旅の試練の中で、二重人格は克服される。
善良だが無力なオデッタという人格と、有力だが凶暴なデッタという人格がアウフヘーベンしてスザンナという善良にして有能な人格を獲得する。
彼女の旅の試練の中で立派なガンスリンガーに成長していく。
彼女の射撃の腕前はエディ以上のようだ。
エディとスザンナは恋に落ちる。
スザンナの車椅子を押すのはたいていエディの役目である。
バリアフリーなインフラの整った世界ではないので、車椅子での旅は大変そうである。
以前、この世界に召喚されていたジェイクという少年だが、彼は1970年代のNYの少年で、とあるサイコパスに殺されて、この世界にやってきていたのだ。
このサイコパスは偶然にもというか、それこそが運命によるものなのか、実はスザンナ(当時はオデッタ)を地下鉄の線路に突き落とし両足を切断させるに至った悪党でもあった。
とにかくどうしようもない悪党なので、ローランド一行はこの男を殺す。
すると、タイム・パラドックスが起きるわけだ。
男が事前に殺されたことによって、70年代にジェイク少年を殺すことが不可能になった。
というわけで、ジェイクは殺されることなく、ローランドの世界に飛ばされることもなく、普通に学校に通い、普通に生活を続ける。
しかし本来の運命は殺されてローランドと旅をともにすることだったので、その運命のズレが、少年のアイデンティティを狂わせ、精神異常をもたらす。
そのパラドックスはローランドにも波及する。
彼の記憶には、以前ジェイク少年と旅をし、「黒衣の男」を捕縛する彼の目的のために見殺しにした記憶があるのだが、パラドックス後の現実では、少年はこの世界に召喚された事実はなく、ローランドと旅をともにした事実もないわけで、ローランドの記憶と事実が異なり、ローランドも統合失調症のような状態になってしまう。
いろいろあって(苦労惨憺の末に)、結局ジェイク少年は、改めてローランドの世界に召喚され、ローランドとジェイク、双方の精神異常はおさまる。
ジェイク少年もダークタワーを目指す旅の仲間に加わる。
彼は現在ガンスリンガー見習いという身分だ。
ついでに、多少知能が発達していて少し言葉も喋れる犬のような動物も旅の仲間に加わる。
ダークタワーへの道のりは遠く険しいが、ガンスリンガー一行は着実に目的地に近づいている。
そんなこんなで、第五部が始まった。
文庫本にして3分冊なのでかなり長い話だ。
まだ上巻の100ページくらいしか読んでいないのだが、これがけっこう面白い。
最近キング作品を全然読んでいなかったので、少し禁断症状が出ていたのだろう。
ものすごく面白く感じられる。
第五部の舞台はとりあえずカーラという貧農が1,000年んくらい前から暮らしている痩せた土地だ。
ここは変わった土地柄で、生まれてくる子どもはほとんど男と女の双生児だ。
ところが六世代前くらいから「狼」という武装集団が20年~30年に一度、襲撃してくるようになった。
「狼」たちは双生児の片方を連れ去る。
そしてその子を白痴同然にしてそのうち返してくれるのだ。
アンディというメッセンジャーロボットがいて、彼が「狼」の襲撃が間近いことを農民たちに伝えるところから物語が始まる。
年頃の子どもを5、6人持ってる血気にはやる若い農民が、子どもをさらわれるのはイヤだから、「狼」たちと戦おうと集会で提案する。
年頃の子どもがもういない年寄りや、臆病者や、自治体の有力者の腰巾着の日和見主義者たちは、「狼」に子どもを生贄に差し出せば、村や畑が焼かれる心配はないのだから、しょうがないあきらめよう、子どもを生贄にするのも仕方がないと戦おうとはしない。
そもそも武装した「狼」たちは数も多く強いらしく、農民には戦う手段も無いのだ。
そこでキャラハン神父が登場!
この人物キングの初期長編『呪われた町』で吸血鬼退治に関与した人物らしい(『呪われた町』を読んだのはずい分、昔。私の脳にはキャラハン神父の記憶がない)。
キャラハン神父の提案!
ロボットの情報によるとガンスリンガーたちがこの近くまでやってきているので、彼らを用心棒に雇って、「狼」たちと戦ってもらいましょう!
まるで『荒野の七人』(原作『七人の侍』)のような展開。
やっぱり最後に勝つのは農民だけなのか?
まだここまでしか読んでいない。
早く続きが読みたい。
話の先が早く知りたい。
が、もったいないので、就寝前の楽しみにちょっとずつ読み進めていく。
それに『カーラの狼』を読み終わっても、さらにその続きの第六部『スザンナの歌』と第七部『暗黒の塔』の翻訳が出るのはもうちょっと待たなくてはならないし。
なにしろキングの年齢を考えると、キングの新作を読める機会はどんどん減っていると考えざるを得ない。
まことに残念なことだが、天才作家と言えども、限りある生命の人間、これはいたしかたない。
オーウェルの伝記 [人文科学(主に小説)]
最近ますますリスペクトの高まってきてるジョージ・オーウェルに関する本を読んだ。
オーウェルに関する本ならなんでも読んでみたいので、内容は特に確かめずに読み出した。
作家論や作品論ももりこまれているが、基本的に伝記本であった。
この本がユニークなのは、伝記作家が文献を漁ったり、関係者にインタヴューをしてまとめただけでなく、この著者自身が晩年のオーウェル(彼は肺病で若死にしている)と10年間交流があったことである。
交流があったというより、家族同士でおつきあいをしていた友人同士だったらしい。
この著者は父親の代からの熱烈なシオニストだったのに、オーウェルは反シオニストだったにもかかわらず、非常に信頼しあった友人であり続けられた。
教養のある人間はやっぱり違うなあ、と思った。
主義思想で異なる点があっても、人間は理解しあえるものなのだ。
もっとも反シオニストというのは、反ユダヤ主義とはまったく違う。
オーウェルはイスラエル国家建設がパレスチナに火種をもたらすことを嫌っていたのだ。
オーウェルは穏健にも、「復讐は不快だ」との考えを持っていたらしい。
著者はユダヤ人なので、もちろんイスラエル建国に大賛成だ。
この伝記で面白かったところベスト3!
①
既婚のオーウェルは実直な人ゆえ、どうにも気に入った女ができたので、奥さん(若死にした前妻)に素直に告白して、奥さんの同意の下、買春だか浮気(情事)をしたらしい。
オーウェルもオーウェルだか、奥さんも奥さんだ。
②
オーウェルはたいへん女好き。
特に美人でハイカラな女が好み。
再婚相手を求めて数多の女性にプロポーズしたのだそうだ。
しかもそのプロポーズの内容が面白い。
私はもうすぐ死ぬが(すでに肺病がかなり悪かった)、『動物農場』の印税がどんどん入ってくるので生活には困らないよ、といった内容のプロポーズ。
背が高く、基本的に女にはもてたオーウェルだそうだが、このプロポーズはさすがにどの女性にも相手にされなかったようだ。
③
「すべてのタバコ屋はファシストである」と(冗談交じりに)主張していたらしいこと。
彼は若い頃から肺病だったのにヘヴィスモーカーだったので、奥さんを始め周囲の人間からうるさくタバコをやめるよう言われ続けていたらしい。
本人も肺病にタバコはいかんとわかっていただろうけど、それでもどうしてもタバコをやめられないので、そんな皮肉な主張をするようになったのかな?
ロシア文学も私はけっこう好きだ。
ドストエフスキー、トルストイ、ツルゲーネフなどは学生時代に読んだ。
フランス文学よりよっぽど親しみがある。
しかし革命後のソ連ではロシア文学は、てっきり死に絶えたんだと思いこんでいた。
しかし、この本の著者が教えてくれるところでは、共産主義政権下でも、パステルナーク、ソルジェニーツィン、シニュフスキー、ナデージダ・マンデリシュターム、エヴゲニヤ・ギンズブルグなどのすぐれた文学者や文学が存在していたそうだ。
ソルジェニーツィンの名前は私も聞いた事がある(著作を読んだことはない)が、他の作家は初耳のものばかりだ。
興味を覚えたので、今度、機会があったら読んでみたいと思った。
オーウェルはアーサー・ケストラーとも交流があったそうだ。
アーサー・ケストラーにはあまり興味はなかったが、彼が『剣闘士たち』の作者であることを知った。
『剣闘士たち』はたしか、カーク・ダグラスが製作した、キューブリック監督作品『スパルタカス』の原作じゃなかったかしら。
これにも興味を覚えたので、アーサー・ケストラーも機会があったら読んでみたいと思った。
『鎖を解かれたプロメテウス』 [人文科学(主に小説)]
イギリスの詩人シェリーの代表作を読んだ。
就寝前に寝っころがりながら読んでいたせいもあるし、詩を外国語に訳すことの根源的問題もあるのだろうが、なかなか集中力が続かない。
私は基本的に詩は苦手だ。
幻想系も苦手だ。
いつの時代の話なのか、どんな登場人物(妖精とか神様とかばっかり)が何をやっているんだか、なにがなんだかさっぱりつかめなかった。
文庫本には訳者の先生の解説があるので、それを読めばどういう詩だかまあ普通にわかるのだが、解説を読まずに詩だけ読んでこれを理解すると言うか、感得できる豊かな感性を養わなければいかんなと反省することしきり。
うん、詩は良いよ。
詩は難しいけど良いよ。
散文の読みすぎは人の心を乾かしてしまうのさ。
まあ、アレだ。
わけがわからないうちに終わってしまって、物足りなくもあるのだが、詩というものは音楽と同じで何度も繰り返して読んで楽しむものなのだろう。
小説や映画はね、筋をあらかた忘れた頃合を見計らって再鑑賞したいところだが(一度読んだり観たりしただけで、事足りるような浅薄なものはもとから必要ない。再鑑賞に耐えるだけの内容がないものは最初から買いません、読みません、観ません)。
また間をそれほどあけずに読み直そう!と思う。
一期一会というから、もう一生読む機会は訪れないのかもしれないが…
『ダブリナーズ』 [人文科学(主に小説)]
寝る前に、寝っころがりながら、ちょびちょび読んでいたジョイスの文庫本がようやく読み終わった。
日本を舞台にした、登場人物も日本人ばかりの英語文学を日本語に翻訳した小説が果たして(評判どおり)面白いのかと半信半疑で読んだが、すごく良かった。
最初に読んで、かなり心の琴線に触れた『日の名残』(これはイギリス人が主役のイングランドが舞台のお話)よりもずっと良かった。
日本、万歳。
いつか日本は(天災や人災で)消滅したとしても、
私がどこかで生きている限り、私の心の中では日本は永遠に不滅です。
文庫本大好き [人文科学(主に小説)]
学生時代から文庫本が大好きだった。
理由は安いから。
それに小さくて軽いので、寝っころがって読めるのも嬉しい。
最近は、電車の中では音楽を聴くことにしているが、以前は文庫本を持ち歩いて、通勤・通学のお供にもしていた。
ハード・カヴァーなんて高くて買えん。
それに売れる本は、すぐに文庫化されるし。
今月はどんな文庫が出るのか、毎月楽しみだ。
最近はインターネットで簡単にチェックできるのでありがたい。
http://www.taiyosha.co.jp/bunko/index.html
4月は、最近滞っていた『ガンダムSEEDデスティニー』の続きが読める。
5巻目だが、そろそろ完結だろうか。
残念ながら、毎月出てたスティーヴン・キングのダーク・タウア・シリーズは4月はお休みのようだ。
↓これが今のところ最新刊だが、角川版でもう読んでるので、当分不要。
私が読みたいのはこの続きなのだ。4月に出ると思ってたのに、がっかり。
- 作者: スティーヴン キング
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/02
- メディア: 文庫
- 作者: スティーヴン キング
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/02
- メディア: 文庫
オーウェル『カタロニア讃歌』 [人文科学(主に小説)]
ジョージ・オーウェルを読みました。
すごいルポルタージュですね。
これに比べたら鎌田慧なんて子ども騙しみたいなもの。
従軍取材じゃなくて、実際にスペイン市民戦争に義勇兵として参戦してます。
しらみにたかられて、首を撃たれてます。
そして共産党に裏切られて逮捕されそうになります。
共産党のデマ攻撃のすさまじさがよくわかりました。
この経験が『動物農場』につながっていくのかな。
『1984年』もこの共産主義体験から生まれたのでしょうね。
題材が戦争なので、炭鉱労働ルポ『ウィガン波止場』よりすごかったです。
『盗まれた街』 [人文科学(主に小説)]
古いSF小説読みました。
The Body Snatchers という原題の方が有名かもしれません。
私もあまりSFには詳しくないのですが、古典SFとして話には聞いてました。
ホラーの要素が強くて、スティーヴン・キングにもつながる要素ありです。
55年に書かれたものであるせいか、作者の資質によるものか、キングホラーに比べたら、非常にお上品です。
暴力やセックスがあまり表現されていません。
主人公は育ちの良いお医者さんで、悪い異星人にさえ暴力をふるうのを遠慮します。
ヒロインとも何度もチャンスがありながら、セックスしません(最後は結婚しますが)。
地球を滅ぼすつもりの悪い宇宙人もあまり非暴力的です。
キングの乱暴なホラーに慣れている私には、かえって新鮮でした。
結局、地球は滅亡しません。
宇宙人が去っていくシーンは幻想的でよかったです。
被差別階級の靴磨きの黒人の挿話も白人の優越意識を皮肉るエピソードもヒューマニズムがあってよかったです。
キングの『シャイニング』を連想しました。
キングの『シャイニング』、もともとのタイトル案は『シャイン』だったそうですが、「シャイン」だと黒人の靴磨きをさす差別用語だから変えるようにアドヴァイスされ、それに従って『シャイニング』に変更したんだというエピソードを思い出しました。
『小説作法』に書いてあったんだと思います。
記憶違いだったら、ごめんなさい。いまさらながら『買ってはいけない』 [人文科学(主に小説)]
安くてカロリーがいっぱいでお得だから。
そのマクドナルドのビーフパテは牛肉じゃなくてミミズの肉だとするすごい本がかつてあった。
私はこれが最初に出た頃大学生で、大学の生協に平積みだった。
そんな事情から、世間でブームになる前に、初版を買った。
初版本にはたしかにマクドのバーガーはミミズとなっている。
しかし、これはあきらかに著者の暴走だったらしく、後の版では削除されている。
初版本はいつかプレミア価値がつくね!大事にとっておこう。
私は独占資本家は基本的に大嫌いなマルキストだから、この手の本には惹かれる。
書店で見かけると、つい手にとってしまう。
でも、読むとたいていがっかりする。
基本的に左翼の書く、軽いパンフレット系の本は似たり寄ったりで新味がなくつまらないものだ。
左翼本を読む読者はみな低脳だと思ってばかにしているような気がする。
だいたい、やまやhttp://www.yamaya.com/#の辛し明太子を買うなと言われても、あんな高額商品、私には経済的理由から滅多に買うことができないのだ。
多少の毒が入ってようがいまいが、一生に数度しか食わんのだからかまわんじゃろ。
まあ独占資本家の悪口は大好きなので、それなりに楽しんで読めた。
もちろんまじめに読むに値するような本ではないので飛ばし読みだったが。
世間でブームになると批判本も出た。
1冊だけ購入して読んでみた者だ。
いかにもベストセラーの便乗本っぽい酷いやつ。
デザイン、完全にパクってるし。
あまり左翼的戦闘性がなくて私好みではなかったと憶えている。
最近、なんとなく本家の続編を読んでみた。
なんか、なつかしかった。
同じよなことが飽きずに書かれている。
まあ、ほとんど飛ばし読みだったけど。
週間金曜日も廃刊になったって誰かから聞いたけど、それはガセネタだったようだ。
ちゃんと新しいのが刊行され続けている。
http://www.kinyobi.co.jp/Recent
さらに続編の続編もあるのね。
いつか機会があったらぱらぱらと読んでみよう。
総括的な本があったので、これも読んでみた。
- 作者:
- 出版社/メーカー: 鹿砦社
- 発売日: 1999/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
もともとが大論争といっても、売れないライター同士の喧嘩のようなもので、実際の大企業が参戦しなかったので、たいしておもしろくもない。
企業はかしこいからつまらんあてこすりや悪口には反論せず、無視で対応するのが一番良いのだろう。
人の噂も75日とかいうから、黙っていれば、じきにブームは過ぎて、また誰も気にしなくなるものだ(左翼の活動家は除く)。
この『大論争』で面白かったのは、生協の活動家の匿名日記のようなものだ。
彼女らにとっても『週間金曜日』は「クソまじめ」で面白くないらしいのだ。
原発やら沖縄米軍やら従軍慰安婦やら南京大虐殺やらの話、10年1日のごとくかわりばえしないから、そりゃ大事な話だけど、面白くもなんともないのはあたりまえだ。
同じ話を繰り返し聞かされるのはうんざりするものだ。
イングヴェイだって、どのアルバムも同じだって批判されてる。
最新作、サウンドプロダクションも良かったけど、たしかに新味に欠ける。
でも、好きな人には同じようなものの繰り返しでも許してしまえるのだ。
かえって左翼も変節したら、新味は出て面白くなるかもしれないが、批判攻撃にされされて厄介なことになるに決まっている。
アーティストでも、新しいことを初めて、ファンから総スカンを食って酷い目にあって、もう新しいアルバムを作らなくって、古い曲しかやらなくなってしまった大物バンドがある。
キッスも、モトリー・クルーも、ヴァン・ヘイレンもその口だ。
↓彼らの新機軸だけど、ファンから拒絶されたアルバム。
カーニバル・オブ・ソウルズ~ブルース・キューリック、エリック・シンガー、ラスト・レコーディング~
- アーティスト: キッス
- 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
- 発売日: 2005/06/09
- メディア: CD
どれも良い音楽ではあるんだけど、みな地味かな。
私はけっこうこういうマイナーなアルバムも好き。
でも、音楽性が変わると多くのファンは怒るんよね。
左翼も同じだろう。
いつまでも同じなのがよいのだ。
人間って保守的な生き物だから。
特に、歳をとってくるとさ。
アマゾン本3 [人文科学(主に小説)]
3冊目のアマゾン本を読んだ。
amazonia アマゾン・ドット・コム成功の舞台裏 元トップエディターが語るアマゾンの軌跡
- 作者: ジェームズ・マーカス
- 出版社/メーカー: インプレスコミュニケーションズ
- 発売日: 2005/06/23
- メディア: 単行本
先に読んだ2冊は立場は違うとはいえ(片方は管理職、もうひとりは短気アルバイト)、外人さんが書いた本なので、だいぶ毛色というか雰囲気が違っていて面白かった。
でも、やっぱりリストラで会社を辞めることになった人の本なので、やはり恨み節が流れていて、ちょっと憂鬱になる本だ。
そういう意味では↓この人と同じような立場の人なので似てるとこもあるかも。
アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか
- 作者: 松本 晃一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/01/28
- メディア: 単行本
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場
- 作者: 横田 増生
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
↑これによると、同じ労働で日本のアルバイターは本国の労働者の半額くらいの給料しか貰ってないと書いてある。
日本のフリーターと呼ばれている人たち、どうも典型的労働者階級的戦闘的なところが感じられなくて、私は苦手だ。
フリーターって、「社会のクズ」とか蔑まされながら、何が楽しくてそんな人生を生きているのか私にはまったく理解できない。
横田氏のルポを読んで感じたのは、アマゾン・ジャパンの最下層は、まさに人間のクズというか労働者のクズの吹き溜まりになっているらしいということだ。
フリーターのこうした徹底的なダメっぷり(無気力、無批判、不気味な卑屈さ)を読むと、NEETが勝ち組のように思えてくるから不思議だ。
NEETが勝ち組なのか負け組なのかは論争のあるところのようである。
http://img.29g.net/flash/etc/neet.html
『ガンスリンガー』について [人文科学(主に小説)]
面白くって、徹夜で読んでしまいました。
キングのライフワークの第1部 新訳『ガンスリンガー』。
旧訳とはまるで違います。
翻訳のうまい下手ではありません。
キング自身が『ダーク・タワー』を7部構成のひとつの物語としてまとめるため、大幅に書き換えているのです。
オリジナルにはなかった、のちに書かれた作品の伏線がひかれまくってます。
角川文庫版で第4部(角川版はそこで頓挫している)まで読んだ人、さらに原書で7部まで呼んでいる人は、思わずにやりとしてしまうでしょう。
この第1部では「旅の仲間」となる主要人物も登場せず(ひとり登場しますが、まだ顔見せ程度です~正確にはまた違うのですが、読んでない人のために詳述は避けてます)、超大作のジャイアント・プロローグ的な作品です。
新潮文庫で今年中に全7部が刊行される予定なので、まだ『ダーク・タワー』の不思議な世界を体験していない人は是非、ここから読み始めてもらいたいです。
個人的には『ザ・スタンド』がキングの頂点だと思っており、キング作品としては最高傑作とは呼べないまでも、凡百のファンタジー作家の書いた平凡なファンタジー作品と比べてれば、作家としての、小説としての雲泥の差を見せつけられること請け合いですから。
角川の旧訳は旧訳で名訳なので、今でも読む価値ありなのですが…
これをキングが書いたときはのちのちの構想はまだできていなかったそうで、これは独立した1冊の連作短編として読んだほうがよいです。
で、夜明け前に読み終わったので、さっそく第2部の新訳も読み出しました。
これはちょっと長くて、2分冊です。
で、上巻を読み始めたのですが、50ページで読むのをやめました。
これは旧訳と内容的には変わってないです。
もう知ってる話を読み返すより、早く第4部のあとの続きを読みたいです。
新しい翻訳者、いまやキング研究家の第一人者、 風間 賢二の大ファンならいざ知らず、キング作品が日本語で読めれば、翻訳者は誰でもいいやという一般の読者で、角川文庫版を読んでいる人は、これは読む必要ないと思います。
もちろん旧訳と新訳を照らし合わせて読んでいけば、相違点もいろいろあることでしょうが、旧訳も決して劣っていたわけではないと思いますので。
今回、翻訳者が新しくなったのは、『ダーク・タワー』を1つの大河ファンタジーとして日本に紹介するにあたって、作品に統一感を持たせるために風間氏に一任されたのではないかと思っています。
これはおそらく角川からすでに訳出されている第3部、第4部にも言える事でしょう。
私は角川文庫で第4部まで読んでいるので、新潮文庫の新訳シリーズは、次は第5部から読むことにします。
で、7部まで読み終わったら、風間版『ダーク・タワー』を改めて通読してみようと思っています。
ちなみに角川文庫版の翻訳はタイトルが違っています。
意味するところは同じなのですが。
こっちの方が1冊にまとまっていて値段も安くていいかもしれません。
新潮文庫版にはそれぞれ角川版にはなかった、外人が描いたと思われる、日本人には受け入れがたそうなイラストが挿入されています。
この挿絵によると、ガンスリンガーはスティーヴン・キングに似ています。
クリント・イーストウッドにも似ているかな。
イーストウッドとキングを足して2で割ったような主人公象で、私は違和感を覚えています。
死刑制度 [人文科学(主に小説)]
読みかけのままどっかに行ってしまっていた本が出てきたので、続きを読んだ。
特にストーリーもプロットもなく、ただ死刑囚の日々、特に死刑執行される当日のことを死刑囚の視点からつづり、あわせてその死刑囚の心境が綴られているだけの変わった短編小説である。
さすがにうまいなと思ったのは、娘との再開や、ふてぶてしい受刑者とのやりとりなどでドラマ的なふくらみをもたせて、読者を飽きさせないようになっている。
序文が小説が終わったあとに載っている倒序形式がユニークだ。
その「序」によると、なんでもこの短編はもともと死刑制度の廃止を訴えるために書かれたプロテスタント小説なんだそうだ。
翻訳の文庫にして本編が130ページくらいなのに対して、死刑制度反対をこんこんと訴える「序」に30ページもさかれている。
フランス文学なのでエスプリの効いた文章で締めくくっている。
フランスから神々は去った、国王らも去った、今度は死刑執行人らが去る番だと。
死刑執行人はスペインかロシアにも行ってくれと言っている(フランス人らしい発想だ)。
我々アジア人と違って、西欧先進国の人間はけっこう死刑制度に対して抵抗が強いらしい。
人間の生命は、人間が作ったものではなくて、神が与えたものだから、人間が勝手に人間の生命を奪ってはいけないというキリスト教精神からかな。
今では西欧先進国では死刑制度が廃止になっている国が少なくないが、この作者の告発は1832年のことだから、当時としてはかなり進歩的な思想だ。
この作者はまたどうせ死刑を執行するなら、公開処刑にするべきだと考えているようだ。
日本では今でも死刑が盛んに執行されているが、非公開処刑だ。
ユーゴーによれば、これはたいへん卑怯なことになるようだ。
死刑とは言え、殺人にはかわりないので、それをこそこそと密室で行うのは卑怯極まりないことになるらしい。
社会が悪人を殺すなら殺すで、その社会の構成員は、殺される人間の断末魔の苦しみを見る義務があると考えているようだ。
悪人を屠殺場に送るだけ送って、実際の殺人現場をちゃんと見届けない役人や市民は無責任だということになるらしい。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い出した。
この映画ではヒロインのビョークちゃんが無実の罪で死刑に処せられるだけれど、ちゃんと公開処刑だった(舞台はたしかアメリカのどこかだったと思う)。
被害者の遺族らが(冤罪の)ビョークがぶらんと吊るされる一部始終を見て、復讐心を晴らすのであった。
アマゾン本2 [人文科学(主に小説)]
先週辺りから読んでるこの本、読み終わりました。
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場
- 作者: 横田 増生
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 2005/04
この本、けっこうやばいかも。
結局アマゾンは秘密主義なので、ほとんど取材が成立してません。
というわけで、憶測記事がほとんどなのですが、かなりやばいめなことを示唆ししてるのです。
これは憶測ではなく、著者の目撃スクープですが、アマゾンはブックオフと取引をしているそうです。
具体的にはアマゾンはブックオフから本(か何かを)仕入れていると。
で、著者の憶測としては、ブックオフから仕入れた中古本の新品同様程度に綺麗なやつを新品として、アマゾンの顧客に売りつけているのではないかと疑惑を持っているようです。
その憶測が事実じゃないことが明らかになったら、この本の運命は永田寿康先生の議員生命のような状態になりますね。
普通の本屋では、新品の本には必ず帯がついているもので、帯がついてないと返品もできないそうですが、アマゾンは顧客に新品の本でも帯なしの状態で売っていると著者は証言しています。
必ず帯なしで売るわけではなくて、帯が付いてたり付いてなかったりだそうです。
漫画なんかで10冊以上に分冊されているものを全巻アマゾンで買うと、その一部には帯が付いてて、一部には帯がなかったりということがあると著者は言っています(普通の本屋ではありえないこと)。
つまり普通の本屋では中古本でない証に必ず帯が付いているわけですが、アマゾンはその慣習に従っていないので、帯のあるなしで中古本か新品か判断できないということですね。
さらにこの著者はブックオフが故買屋であることを示唆しています。
これも事実とまったく違っていたら、永田寿康先生状態です。
そういうわけで、この本は近いうち入手困難本になってしまうかもしれないな、と読みながら思いました。
部分的に訂正されて、以後「改訂版」が出回ることになるかもしれません。
初版本をとっておくと、いつかプレミアがつくかなと淡い期待を抱きました。
この著者自身、アマゾンの研究のため、アマゾンで買い物をするようになり、すっかりアマゾンにはまってしまったそうです。
本好きはたいていそうですが、既存のリアル書店には大いに不満を持っているものです。
その理由はだいたい以下の3つじゃないでしょうか。
①本屋の販売員の態度が横柄で感じが悪い。
②本屋の販売員の商品知識が貧弱。
③欲しい本の在庫がない。
④欲しい本を取り寄せてもらうのにものすごい時間がかかる。
たしかにアマゾンを利用する限り、この4つの不満は感じないですみます。
アマゾンが人気が出るのもよくわかりますね。
ただこの著者がこの本で何を言いたいのか、焦点が定まっていないのが残念です。
アマゾンが停滞している日本の本の流通に革命をおこしたという点と、アマゾンが使い捨て労働者を搾取している点の、タイトルにもあるとおり「光」の部分と「影」の部分の両方が矛盾したまま提示されています。
事実を提示することにしか興味がなく、あまり考えごとはしない性格の著者なのかもしれません。
またアメリカ移住の準備が忙しくて、あまり本をまとめる時間がなかったので、ごちゃごちゃな内容のまま出版されたのかもしれません。
あと、面白かったのは、この著者はアマゾンの物流センターで半年アルバイトで低賃金労働をしているのですが、この物流センターではたくさんの本が紛失しているんだそうです。
おそらくはバイトが盗んでいるのでしょう。
恐ろしいほどの低賃金と過酷な労働を余儀なくされている労働者で、企業に対する忠誠心はほとんど皆無に近い状態らしいので、管理が甘いようなら、盗めるものは何でも盗んで「付加給付」とするのが人情というものでしょう(もちろん人情と法律は別物ですが)。
これは著者の示唆ではなく、私がこの本を読んでて自然に頭に浮かんできた空想のサイクルなのですが、まずアマゾンはバイトに本を盗まれて損失を出しています。その分ブックオフから中古本を安く買い取って、新品として高く売って、その利鞘でバイトに盗まれた損失を補填することでよしとします。バイトは低賃金で過酷な労働をさせられている見返りに本を盗んでブックオフに売って、生活費を補います(低賃金労働者は読書なんかしてる経済的余裕も教養もありませんから、読まずに綺麗なまま故買屋に持って行きます)。ブックオフは安く買い叩いた盗品の新品同様の中古本をアマゾンにそれなりの値段で売って儲けます。このサイクルがもし本当にあったとして、アマゾンの顧客は損をしているでしょうか? してないですね。別に汚い中古本をつかまされているわけではないですから。だいたい本当の本好きは本が新品か中古かなんて気にしないでしょう。本が吐き気を催すほど異常に臭いとか、著者の意図が改変させられているほど落書きだらけとか、そういうのはダメですが。欲しい本が家にいながらぼったくり価格でなく迅速に手に入るのですから不満はないでしょう。まあ、こんなサイクルは実在しないと思ってますが(『光と影』からのインスピレイションで頭に浮かんだだけで)、もしあったとしたら、結局ブックオフの一人勝ちですね。
『光と影』を読む前に、このアマゾン本も読んでました。
-
アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか
- 作者: 松本 晃一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/01/28
- メディア: 単行本
- メディア: 単行本
次に読むアマゾン本はこれです。
amazonia アマゾン・ドット・コム成功の舞台裏 元トップエディターが語るアマゾンの軌跡
- 作者: ジェームズ・マーカス
- 出版社/メーカー: インプレスコミュニケーションズ
- 発売日: 2005/06/23
- メディア: 単行本
どんな内容なのかまだ知りません。
楽しみです。
でも今週末は忙しくなりそうなので、読むのは来週になるかな。
アマゾン本 [人文科学(主に小説)]
昔、ブックオフhttp://www.bookoff.co.jp/が流行し出した頃、危機感をおぼえたらしい古書店や出版業界からすごいバッシングを受けていた。
それでブックオフの批判本がたくさん出版されていた。
大学の図書館になぜかこの手の本がたくさんあったので、で暇つぶしによく読んだものだった。
今はブックオフのようなリサイクル書店と、文庫や漫画はあきらめた古書店はうまく住み分けをしているらしくて、この手の議論は聞かなくなった。
ブックオフでブックオフの批判本を探すけど、一度も見かけたことがない。
なぜか?
それは誰にもわからない。
それはともかくアマゾンの批判本はちゃんとアマゾンで買えます。
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場
- 作者: 横田 増生
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
先週から、ちょびちょび読み進めている。
それほど興味のある話ではないので、ちょびちょびである。
典型的な労働者階級出身の私としては、あまり戦闘的でないこの著者の思想傾向にはシンパシーを感じません。
鎌田のような労働者階級の英雄と違って、この著者はもともと金持ちのボンボンのようだし。
そんなこんなで、ようやく2/3くらいまで読んだ。
作者も本分で触れているが、蒲田慧の名著の顰に倣っている(良い意味で)ようだ。
私も昔、予備校生だった頃、予備校で講師のアルバイトをしていた極左の先生からこの本をプレゼントされて読んで、いろいろな意味でびびったのを懐かしく思い出した。
たしかもう鎌田先生の本を1冊プレゼンされました(いつの間にか、なくしてしまったけど)。
↑たしかこの本。
最初に掲げたアマゾンの本ですが… ああ、なんというか、アマゾンを(悪い言葉ですが)リピーターと呼ばれるほど利用する人は年収500万円くらいの富裕層で、アマゾンで働くアルバイトは年収200万円以下という著者の認識がすべてっていう感じですね。
アマゾンは従業員よりも、顧客を大事にしてくれるんですね。
最近は従業員よりも株主を大事にする企業も現れ始めているようですが、日本の企業は基本的に、顧客よりも株主よりも誰よりも従業員(ただし「正社員」のみ)を大事にするところが伝統的、慣習的に多くて、消費者はいつも泣かされることが多いですね。
まあ、大事なのはバランスだと思いますが。
ブックマートについて [人文科学(主に小説)]
近所にブックオフはない。
近所にあるのはブックマート。
あまり盛っていなくて心配だ。
店長が無愛想だからか、品揃えがイマイチなせいかよくわからないが、いつ行っても客があまりいない。
昨日は日曜日だからちらほらいたか。
ブックマートでもないよりましである。
ときどきけっこう掘り出し物をみつけることもある。
ぜひがんばって営業を続けていただきたい。
掘り出し物があったら、買うから…
ブックマートでは図書券も売ってる。
販売価格を聞いたら、490円だった。
新宿では485円で売っていたので、パスした。
でも最近は図書券が品薄のせいか、新宿でも490円になってしまった。
その代わり、図書カードが485円になったので、最近はそっちを購入してる。
ブックマートのホームページhttp://www.bookmart.co.jp/opinion.htmlからアンケートに回答できるのだが、これに協力するともれなく図書券がもらえる(ただし「いつもブックマートをご利用頂いているお客様」限定)。
1ヶ月前にアンケートに応募したところ、おととい、図書券が届いた。
図書券の方がおつりがもらえるから好き。
図書カードは、店員さんに渡すと奥の方へ行っちゃって(何か機械を操作しているようす)、なかなか帰ってこなくて、不便、使い勝手がよくない。
この図書券で何を買おうかな。
『浦安』の新しいのまだ買ってなかったから、それにするか。
小林よしのりに言わせると、ギャグ漫画家は燃え尽きてダメになりやすいらしいが(『ゴーマニズム宣言』自体、ギャグ漫画ではなくなってるし)、この浜岡先生は年とともに、どんどんギャグがパワーアップしている稀有な存在だ。
『英国の近代文学』 [人文科学(主に小説)]
断続的に読んでいた、吉田健一の『英国の近代文学』をようやく読み終わった。
とにかく吉田健一という大先生の見識の高さに圧倒された。
なんて頭の良い人なのだろうと気が遠くなる思いだ。
でも、英文学のファンが読んで、感動するような代物ではない。
とても真面目というか深刻に文学を把握なさっている感じだ。
もうちょっと愉しんで文学と親しめばよいのにと思ってしまう。
断続的に読んでいたのは、中盤まで、シモンズ、ヒューム、エンプソン、リーヴィス、ストレイチェイ、ホプキンス、などなど私のよく知らない作家・詩人・批評家について書かれていて、それだけに吉田の批評も何を言わんとしているのか、どうもつかめなくて、なかなか先に読み進められなかった。
最後の3章はお馴染みのロレンス、ジョイス、ウォーについてだったので、一気に読み終えた。
ジョイス評は特に面白かった。
とにかく吉田の知性と教養の高さは半端ではない。
これだけの高みに昇るには大変な努力と苦行があったと思われるが、それも肉体の消滅とともに霧散してしまうのだと思うと、諸行無常が感じられてやまない。
私には難解でよくわからなかったところもあるので、また機会があったら読み直してみようと思う。
誰が悪い?もちろん教師 [人文科学(主に小説)]
(`へ´) < 「実教出版」の教科書に、「英米両国の国名を誤って逆に記載」があったそうです。
その教科書を丸暗記した受験生は、困ったことになっているようです。
教科書を丸暗記するような健気な受験生がかわいそうです。
誰が悪いのでしょう?
毎日新聞はひっくるめて「大人たち」を犯人ということにしていますが、
私はどう考えても、高校の社会科教師が悪いとしか思えません。
教科書の校正にたずさった出版社側の人間にももちろん責任はあるでしょうけど、
本を作る上で、誤字・脱字・変換ミス(昔は誤植と言ってた)はいくら注意しても、
実際問題、100パーセントは避けようがないヒューマン・エラーです。
字がぎっしりの本から、完全にエラーをなくすには読者の協力が必要です。
私の経験ですが、大学でインド哲学の講義で、
講師の先生の書いた新しい本が教科書に使われましたが、
私もひとつ誤植を発見して、先生に喜ばれました。
次の版から訂正されたか、訂正の紙が挿入されたことでしょう。
大学生は教科書の丸暗記はしないで自分で調べ物をするのものなので、
そんな調子でいいと思うのですが、高校生は教科書丸暗記が基本です。
教科書の誤りに気づかなかった先生たちに全責任があると思います。
なにしろ、「この教科書は02年度の検定に合格。
今年度は424校で6万6163冊が使用され、
11社15冊中のシェアは12.6%で2番目に多かった」そうですから、
相当たくさんの先生がこの教科書を読んでいるはずです。
高校の教師は科学的検証能力も批判精神も欠如した白痴ぞろいなのか?
高校の教師っていったって、ちゃんと4年生大学の卒業生でしょうから、
他人の言うことを鵜呑みにせず、
自分で調べ物をすることの大切さくらい習ってきたでしょうに。
なげかわしいことです。
高校に通い続けることが無意味に思えて中退した自分は正解だったな。
偉大なアーティスト尾崎豊も高校中退だし。
<教科書訂正>センター試験に出題 救済措置なし
教科書通りに答えると、不正解になる――今年の大学入試センター試験で、英語リスニングテストに続きミスが明らかになった。文部科学省の27日の発表によれば、実教出版(東京都千代田区)の政治・経済の高校教科書に掲載されていたグラフに誤りがあった。類似したグラフが今年の大学入試センター試験で出題され、受験生が同社に問い合わせて判明した。この教科書で学んだ受験生が不利益を被った可能性があるが、センターは「問題と答え自体に誤りはない」などと救済措置は取らない方針だ。
同省教科書課などによると、グラフは、日米英独仏のGDP(国内総生産)に占める公共投資の割合の推移を示した。実教出版が教科書に使う際、英米両国の国名を誤って逆に記載。検定でも訂正されなかった。
センター試験では、5カ国のうち日米英3カ国の割合の推移を示したグラフを示し、正しい国名の組み合わせを答えさせる問題が出題された。配点は100点満点中3点。この教科書で学んだ生徒は、教科書通りに解答すると間違いとなる。
同試験後の24日に群馬県の受験生から同社に問い合わせがあり誤りが確認されたため、同社が25日に文科省に訂正申請を提出。27日付で同省が訂正を承認した。この受験生は教科書通りに答えたため、不正解となったという。
同社は「教科書への信頼を傷つける結果となり深くおわび申し上げる」と謝罪。同省教科書課の山下和茂課長も「教科書の誤りで一部の受験生が正答を得られなかったとすれば申し訳なく、心からおわび申し上げる」と陳謝した。
また、大学入試センターは「大変気の毒だが、救済措置は正解を答えた受験生に不利益になり、救済措置は取れない」と述べた。
同課などによると、この教科書は02年度の検定に合格。今年度は424校で6万6163冊が使用され、11社15冊中のシェアは12.6%で2番目に多かった。
センター試験では昨年も、国語1の問題で、教科書と同一文章は避けるよう厳重チェックすることになっていたのにもかかわらず、1社の高校教科書に載っている評論文が出題されるミスがあった。【長尾真輔】
◇許されない理不尽な不手際
誤った教科書を学んだ受験生が、センター試験で不利を被る。公平な扱いを受けるべき受験で、英語リスニングテストでの機器不具合や監督者のミスなどに続き、あってはならないことが起きた。今回判明した記載ミスからは、いくつもの疑問点が浮かぶ。
教科書を使い始めて2年近くたつのに、なぜ出版社も文科省も、そして教育現場もこんな単純ミスに気づかなかったのか。実教出版は「校正は3回、あるいはそれ以上行った」と釈明する。
しかし、問題のグラフは、公共投資割合の高い日本と低い米国に対し、70年代後半から80年代初めにかけて公共投資の割合が一気に低下する英国の動きが特徴的だ。これは79年に労働党から保守党に政権が移り、「サッチャー革命」で小さな政府づくりが進められた経緯を物語る。同省は「なぜこんな間違いに気づかなかったか。調査態勢を見直していきたい」と表明したが、後の祭りだ。
一方、昨年の国語の出題ミスを受けて、大学入試センターは再発防止を約束した。しかし、再び15冊の政治・経済の教科書のうち1冊しか使っていないグラフと類似したグラフが出題されるという不可解なことが起きた。同センターによると、問題に使うグラフや写真、表が教科書に出ているかどうかの確認は、問題作成者に求めていなかったという。センターは「今後はすべてを見るようにしたい」と述べ、謝罪の言葉はなかった。
大人たちの不手際のツケを受験生たちに負わせた形になった。将来を左右するセンター試験で、こんな理不尽なことが許されるわけがない。【長尾真輔】
(毎日新聞) - 1月27日21時18分更新
06年01月27日の予定 [人文科学(主に小説)]
昨日は酷かった。
朝食べた、ベーコンと卵と牛乳が悪かったのか、
胃がやられてしまって、一日中吐き気におそわれて、寝込んでしまった。
胃がもう何も受け付けないので、以来ずっと干している(断食状態)。
でもまだ吐き気がする。
胃の中は空っぽなのだが、胃液だけは出る。
苦しみながら寝ていたら、片頭痛発作も起こった。
イミグランも高価な薬だが、効果はイマイチだ。
体質に合っていないのか、それとも私の片頭痛発作の程度が酷すぎるのか。
なぜか肩こりも酷い。
寒さのせいか?
心理的ストレスがあちこちに影響しているのだろうか。
今日は結婚相談所に相談に行く予定だったが、Eメールでキャンセルの連絡を入れた。
今日もおとなしく療養に努めなくてはならない。
昨日は体調が悪すぎて、読書もできなかった。
今日はせめて家で読書くらいできるとありがたいのだが。
ディケンズの軽いのが読みたい。
スティーヴン・キング、今年の新作 [人文科学(主に小説)]
『ダーク・タウアー』シリーズは完結した。
しかし、キングは引退しないでくれた。
嬉しい。
また、新作が読める。
今年もちゃんと新作が出てる。
ただ、
薄い。
本が薄い。
『ザ・スタンド』のレンガのようなペーパーバックが懐かしい。
長編じゃなくて、中編ですね、これは。
翻訳されて文庫になると1冊本として、ちょうど良い厚さになるかな。
The Colorado Kid (Hard Case Crime)
- 作者: Stephen King
- 出版社/メーカー: Leisure Books (Mm)
- 発売日: 2005/10/04
- メディア: マスマーケット