オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』 [人文科学(主に小説)]
大好きなジョージ・オーウェルを読んだ。
小説ではなくて、ルポルタージュ。
オーウェルの貧乏生活体験談。
『パリ・ロンドン』というタイトルからもわかるように、2部構成。
最初はパリでの貧乏生活。
作者はノンエリートの警察官で、大英帝国の植民地で警察官として働いていたのだが、文筆家を目指して、退職、わずかな貯金を切り崩しつつ執筆活動をするためにパリにやってきた。
ロンドンは物価が高いので、パリにきたらしい。
しかし、貯金はすぐに使い果たし、パリで最底辺の暮らしをする。
皿洗いという最底辺の重労働も体験する。
イギリスの友人から、精神障害者の子どもの面倒を見る仕事があるから帰って来いと誘われ、イギリスに帰る。
しかし、いろいろ事情があって、その仕事になかなかありつけない。
というわけで、イギリスで動産も不動産もなくホームレスになる。
イギリスではホームレスを保護する法律があるらしく、ホームレスを宿泊させる施設がある。
イギリスは日本と違って寒いから、路上で寝てると死んでしまうらしい。
当時は段ボールとか賞味期限切れのコンビニ弁当のような便利なものも簡単に手に入らなかったろうし。
しかし、税金を納めないホームレスが長居すると各行政区の負担が大きくなってしまうので、その施設には1泊しかできない決まりになっている。
その行政区に1泊お世話になったら、1ヶ月はその行政区に戻ってきてはいけないことになっている。
さもなくば、放浪罪かなんかで警察に捕まって、刑務所行きだ。
だからイギリスのホームレスは常に放浪する。
施設を追い出されたら、どこか別の行政区の施設まで移動して、そこでまた1泊し、次の日はまた他所へ移動して別の行政区のお世話になるのだ。
路上で寝たりしたら、やはり警察に逮捕されて酷い目に合わせられるから、とにかく歩いて移動し続けなくてはならない。
オーウェルもイギリス各地を放浪して苦労した。
苦労の末、とうとう障害者の面倒をみる仕事(住み込み?)にありつけて、放浪生活から解放される。
イギリスの行政、福祉政策に対するオーウェルの批判・告発になっている。
この本を読むと、ホームレスへの偏見がなくなるだろう。
オーウェルは貧民やホームレスと交流するが、彼らの労働者や定住者と何ら変わりない普遍的な人間性をユーモアを交えて見事な筆致で描いている。
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