『ガンスリンガー』について [人文科学(主に小説)]
面白くって、徹夜で読んでしまいました。
キングのライフワークの第1部 新訳『ガンスリンガー』。
旧訳とはまるで違います。
翻訳のうまい下手ではありません。
キング自身が『ダーク・タワー』を7部構成のひとつの物語としてまとめるため、大幅に書き換えているのです。
オリジナルにはなかった、のちに書かれた作品の伏線がひかれまくってます。
角川文庫版で第4部(角川版はそこで頓挫している)まで読んだ人、さらに原書で7部まで呼んでいる人は、思わずにやりとしてしまうでしょう。
この第1部では「旅の仲間」となる主要人物も登場せず(ひとり登場しますが、まだ顔見せ程度です~正確にはまた違うのですが、読んでない人のために詳述は避けてます)、超大作のジャイアント・プロローグ的な作品です。
新潮文庫で今年中に全7部が刊行される予定なので、まだ『ダーク・タワー』の不思議な世界を体験していない人は是非、ここから読み始めてもらいたいです。
個人的には『ザ・スタンド』がキングの頂点だと思っており、キング作品としては最高傑作とは呼べないまでも、凡百のファンタジー作家の書いた平凡なファンタジー作品と比べてれば、作家としての、小説としての雲泥の差を見せつけられること請け合いですから。
角川の旧訳は旧訳で名訳なので、今でも読む価値ありなのですが…
これをキングが書いたときはのちのちの構想はまだできていなかったそうで、これは独立した1冊の連作短編として読んだほうがよいです。
で、夜明け前に読み終わったので、さっそく第2部の新訳も読み出しました。
これはちょっと長くて、2分冊です。
で、上巻を読み始めたのですが、50ページで読むのをやめました。
これは旧訳と内容的には変わってないです。
もう知ってる話を読み返すより、早く第4部のあとの続きを読みたいです。
新しい翻訳者、いまやキング研究家の第一人者、 風間 賢二の大ファンならいざ知らず、キング作品が日本語で読めれば、翻訳者は誰でもいいやという一般の読者で、角川文庫版を読んでいる人は、これは読む必要ないと思います。
もちろん旧訳と新訳を照らし合わせて読んでいけば、相違点もいろいろあることでしょうが、旧訳も決して劣っていたわけではないと思いますので。
今回、翻訳者が新しくなったのは、『ダーク・タワー』を1つの大河ファンタジーとして日本に紹介するにあたって、作品に統一感を持たせるために風間氏に一任されたのではないかと思っています。
これはおそらく角川からすでに訳出されている第3部、第4部にも言える事でしょう。
私は角川文庫で第4部まで読んでいるので、新潮文庫の新訳シリーズは、次は第5部から読むことにします。
で、7部まで読み終わったら、風間版『ダーク・タワー』を改めて通読してみようと思っています。
ちなみに角川文庫版の翻訳はタイトルが違っています。
意味するところは同じなのですが。
こっちの方が1冊にまとまっていて値段も安くていいかもしれません。
新潮文庫版にはそれぞれ角川版にはなかった、外人が描いたと思われる、日本人には受け入れがたそうなイラストが挿入されています。
この挿絵によると、ガンスリンガーはスティーヴン・キングに似ています。
クリント・イーストウッドにも似ているかな。
イーストウッドとキングを足して2で割ったような主人公象で、私は違和感を覚えています。
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