『ガサラキIII 接触(ふれあい)』 [人文科学(主に小説)]
第1章「静脈瘤」
静脈瘤というのは地名です。
2巻の終わりの激しい戦闘終結のどさくさにまぎれて、ユウシロウとミハルは駆け落ちしました。
大阪の不法滞在の中華街の名前(通り名)が静脈瘤で、ふたりはそこで同棲生活を始めます。
第2章「胎動」
生まれたときから実験材料として扱われきて、石の心のミハルも、ここでの生活で、どんどん人間らしくなっていきます。
ユウシロウは日銭を稼ぐため、オーウェルみたいに朝から深夜まで皿洗いの仕事をします。
そんなキツイ仕事に耐えるユウシロウの心の支えはもちろんミハルです。
ユウシロウとのラヴラヴ隠棲生活に、ユウシロウの妹が突然超能力と偶然に導かれて乱入してきます。
近親相姦気味にユウシロウが大好きな妹の美鈴にとっては普通に大ショックです。
第3章「動乱」
ミハルを管理していたシンボルの手が静脈瘤にも伸びてきました。
ユウシロウを管理していた豪和家の手下も静脈瘤を探り当てました。
これ以上、ふたりの同棲は無理です。
ミハルはかねてから淡い想いを寄せていた、シンボルの評議員メスのところへ帰っていきます。
ユウシロウも実家に帰ります。
この小説の実質的な主人公はIQ160以上の天才、豪和一清です。
物語は一清の、コンプレックスや野望、その思惑や行動によって、動いているのです。
ユウシロウやミハルは、美しい無垢な心の持ち主で、読者的に言って好感度高いですが、自分から行動を起こそうとはしないで運命だか他人に流されっぱなしの操り人形に過ぎず、あまり興味深い人間ではありません。
第4章「決戦」
この近未来の世界では地球温暖化現象などの環境破壊のせいで、アメリカの穀倉地帯が大打撃を受けています。
日本は経済的に強く、アメリカとの経済摩擦が危ないところまできています。
アメリカ政府は日本を潰すため、日本への穀物の禁輸政策の実施を決定します。
そこで、日本の民族主義者のボス西田さんが登場です。
西田さんは一清以上の天才で、豪和インダストリー(つまり一清)の協力を得て、アメリカの日本への経済制裁への報復として、無血クーデターを起こし、日本経済を独裁的に掌握することに成功、米国に対して日本中の全資産を使ってNY市場を混乱させ、アメリカ経済を完全に壊滅させる計画を発動します。
西田さんの天才的頭脳と、豪和の超スーパーコンピュータの力をもってすれば、あらゆる対抗策を講じてもアメリカ経済の壊滅、つまりはアメリカの壊滅は不可避と米国大統領も判断します。
そこで、大統領はシンボルの協力を得て、都市制圧平気の決定版、身の丈4メートルの人型戦闘ロボ、フェイク4機を「第三国のテロリスト」として、超スパコンを物理的に破壊するため、豪和インダストリーの本部に送り込みます。
西田さんのカリスマ性は、自衛隊はもちろん特自にも影響を及ぼしていて、豪和の開発したフェイクとほぼ同性能を誇るタクティカル・アーマー4機を運用して、命懸けでフェイクの襲撃を迎え撃つことに賛同します。
ユウシロウもTAに乗って参戦しますが、『ガンダム』のアムロのような英雄的活躍はしません。
指揮車のバックアップを受けられない分、米軍のテロ部隊の方が不利ですが、彼らには、特自にはまだ配備されていない強力な電磁式レールガンを装備しているという利点があるので、勝負は五分と五分といった感じです。
結局、特自の実験中隊のチームワークのおかげで、犠牲者も出しましたが、勝利をおさめます。
米国大統領は、作戦失敗の報告を受け、穀物モラトリアムを取り消す判断を下し、日本の右翼のボスと直談判します。
西田さんも鉾を収める(米国に対する経済攻撃を中止する)決断をして、切腹して果てます。
(つづく)
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