ヘンリー・ジェイムズ『黄金の盃』 [人文科学(主に小説)]
ヘンリー・ジェイムズの最高傑作長編を読んだ。
とことんまで心理描写にこだわっており、そのため登場人物は少ない。
純粋なアメリカ人の父娘(母は早世)がイギリスにやってきた。
パパは大金持ちで美術品のコレクター。
ヨーロッパ中の美術品をカネにあかせて買い漁っている。
アメリカの故郷に美術館を開くのだ。
イタリア人の没落貴族の末裔の公爵とシャーロットはラブラブ。
だけどふたりは貧乏なので結婚できない。
そこで、いろいろおせっかいな人のはからいもあって、公爵はその金持ちのアメリカ娘と結婚し、シャーロットはそのパパと結婚する。
アメリカ人の父娘(アダムとマギー)は大の仲良しで、ふたりとも社交嫌いで、マギーと公爵の息子と3人、なかばひきこもって仲良くしている。
一方社交好きの公爵のシャーロットの義理の母と息子(もとカップル)は、いつもふたりでいちゃいちゃ(?)している。
こんな平和で満ち足りた生活を象徴して、ひびのはいった黄金の盃としている。
ひびのはいった黄金の盃に対する、処し方は各人各様だ。
公爵はそんなものは価値がないと無視する。
シャーロットは欲しがるが、公爵の意見に従う。
マギーはころっと騙されて買ってしまう。
アダムは、そんな盃が存在しているのかしていないのかも不明(とぼけ?)。
ファニー・アシンガム夫人は、床に叩きつけて、盃をぶち壊してしまう。
マギーは2片だか3片に割れた盃をもとに戻そうとする。
前半は公爵の視点で、アメリカ人父娘の無邪気さを見つめられる。
後半はマギーの視点から、真実の探求がなされる。
結果、マギーは成長する、あるいはイノセンスを失う。
アダムとシャーロットの夫妻はアメリカに帰り、公爵とマギーの夫妻はイギリスにとどまる。
(了)
一見難解だが、登場人物が整理されているので、意外と読みやすいと思う。
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