『ある婦人の肖像(下)』 [人文科学(主に小説)]
ヘンリー・ジェイムズ読み終わりました。
というわけで、イザベルは心の通じ合わない夫とみじめな夫婦生活をおくってます(5年くらい経過したのかな?)。
彼女を礼賛している元婚約者(皆振られてる)たちはあいかわらず、独身のままで、何かきっかけがあるとイザベルと訪ねてローマにやってきます。
従兄のラルフがいよいよ危篤になったので、彼女はイギリスに戻ります。
夫はダメだと言われて、我慢しようかと思いますが、夫の過去の不貞など、全てのカラクリが暴露されたので、思い切って、夫に逆らいます。
イギリスにて、ラルフとようやく心を通じ合わせます。
ラルフ没後、彼女の身の振り方…
進歩的なアメリカ人の友人は離婚をすすめますが、結局、彼女はローマに戻ります。
(了)
行方先生の解説に詳しいのですが、未完というわけでなしに、オープン・エンディングで、なんのためにイザベルはローマに戻ったのか、書かれていません。
単なる気まぐれか、夫と闘うためか、夫を教化するためか、読者の想像にお任せでいいようです。
ヘンリー・ジェイムズは100年も前に亡くなっている作家で版権とかのわずらわしいものはないので、つい、想像力豊かな読者は「続編」を書きたくなってしまいますね。
調べてないので、単なる私の予想ですが、日本に紹介されているかどうかは別にして、絶対「続編」が近・現代作家によって書かれてると思います。
マダム・マールの含みのあるキャラとか、ことの真相が最後の最後まで明らかにされないので、読者は最後まで興味深く読むことが出来ます。
技法的には難解な小説ではないのですが、ヘンリー・ジェイムズがユニークというか奇妙な人格の持ち主なので、その芸術を理解するのは自然と難解になっているようです。
日本では意外とヘンリー・ジェイムズは過小評価されているようですね。
解説によると漱石も『鳩の翼』を紹介しようとして挫折したとか。
ヘンリー・ジェイムズの価値観がけっして古びているのではなくて、ユニークゆえ、特に日本人には理解しにくいのだと、私は思います。
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