松田洋子の「おさんぽ」読みました [犯罪・非行]
先日『薫の秘話』の一冊本を買ってきたのですが、本編はまだ読んでいません。
旧コミックス版は雑誌掲載→コミックス化にあたり、だいぶ修正がなされてるらしいのですが、今度の新コミックス版はすべてなのか、ほとんどなのかは不明ですが、基本的に雑誌掲載当時の無修正版に戻されての収録らしいので、松田洋子研究上も価値が高い一冊です。
ただ本編の内容自体は、改変されておらず、旧コミックス版を擦り切れるまで読み込んだ私としては、いまさらいそいで本編を読む必要性は感じていないのです(何しろ、松田洋子の漫画は読むと疲労感に襲われるし…)。
その代わり、旧コミックス版には収録されていたなかった短篇「おさんぽ」は、私は未読だったので、まっさきに読みました(あまり参考にはならなかったけど、陣野俊史氏(仏文学者・批評家)の「解説 奇蹟のテンション」も読みました)。
「おさんぽ」についてですが、最近作の『ミミッチ』に比べると、ずいぶん絵が汚く、見苦しく感じますが、それが逆によけいに強い毒性を表現するのに役立っているようです。
松田洋子の漫画の魅力はその「毒」にあると思うのですが、特にこの「おさんぽ」は毒性が短いページ数の中に凝縮されているようで、イノセントな主人公に次から次へと引きもきらず矢継ぎ早に襲い掛かる、現代的・都市的悪徳の体現者たちの露骨にカリカチュアされた醜悪さが、魅力的に感じられるほど見事で、読んでいて、すごく気持ち悪くなりました。
短篇ではありますが、『薫』『リスペクター』『ミミッチ』とともに、この「おさんぽ」も松田洋子ファンは、必読必携でありましょう。
本が入手困難になっているようで、残念です。
(今日現在はアマゾンに在庫があるみたいです)
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